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犬をかう前に

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いくら位が適当なのか
   
犬の値段はどの程度が、適当であるといえるのでしょうか。
実際に非常にばらつきがあり、比較もしにくいのです。なぜなら、厳密に同じものが二つとないことが言えます。

まず、一般商品の流通と同じように、どこから買うのかという点から考えてみます。
通常、ペットショップ、ブリーダー、訓練所、ブローカー(仲介業者)といった、いわゆるプロから買う場合と、掲示板などの情報、あるいは友人知人などの紹介で、一般家庭で繁殖された犬を素人から買う場合があります。
そのどちらが良いとは一概に言えませんが、各々の長所、短所について、心得ておいて下さい。

ペットショップ
まず、ペットショップは、犬を売るのが商売だということです。
自家繁殖といって、自分のところで繁殖をした子犬や、契約繁殖者や、お客さんの家で繁殖した子犬や、犬の市場で仕入れた子犬をお店で売るのです。仕入れをした値段の三倍から五倍の値段で売るのが普通だと思います。
そう聞くとなんて儲けているのだろうとか思われるかも知れませんが、商品の性質上、売れるまで並べておけば、売れた時点で、利益が出るといったものではないのです。日毎に商品価値は下がるし、その間の餌代は知れたものとしても、世話には手が掛かるし、売れる前に病気になったり、死んでしまったりすることもあります。
やっと売れたと思っても、買った人が非常識な犬の管理をすれば、体力のない子犬はすぐに病気になってしまう。
そうした非常識な人は、すぐに病気の犬を売ったのではないかと言ってくる。信用商売としては、犬を交換することになるといったリスクも負っているのです。店舗を構える以上、テナント料や光熱費そして人件費を払って、
その上、自分と家族が生活できるだけの利益を出さなければいけないのですから、当然ともいえるでしょう。
以上はショップの立場から見た話ですが、逆にとんでもないペットショップがあることも承知しておいて下さい。

本によっては、信用のおけるペットショップでなどとありますが、
悪徳ペットショップとの見分けが、一般の方につく訳が無いのです。
店が大きくて大々的に広告も出しているので、結構繁盛している。
誠実な商売をしなければ、長い目で商売はやっていけないというのも真実なら、
誠実な商売をしていたなら、店は大きくならないというのも真実なのです。
また、別の観点から言えば、プロから飼う場合は、高い分、他の付加価値もあるでしょう。

日本人はとかく、形のある物には当り前にお金を払う反面、
知識や情報といった、無形のものにお金を払うことには、抵抗を持つようです。
しかし、無知ゆえに、犬にとって可愛そうな結果を招いたり、飼い主にとって大変な思いをしたりすることが
あったとしたなら、多少高いお金を払っても、あとあと、適切な指導、助言を受けることができたなら、
金額に代えられないプラスということもあるでしょう。

ブリーダー
次に、ブリーダーから買う場合ですが、ペットショップ以上に、善し悪しの幅があります。
悪い代表例で言えば、愛犬家殺人事件で広く知られた、A・ケンネルがありますが、事件までは起こさないまでも、商売の中味は似た様なものといったところも多数あります。
本来欧米などでは、一番好ましい入手先として挙げられるのがブリーダーなのですが、日本の現状では最も善し悪しの見極めが難しいとも言えるのです。ペットショップが一般社会に広く認知された職業であるのに比べて、最近でこそ、某フードメーカーのコマーシャルの影響で知られるようになりましたが、比較的特殊な世界での職業であるがために、その規模、形態も様々ですし、悪質な業者が多くいます。

専業のブリーダーには大きくわけて、多くの犬種を扱うブリーダーと、特定の犬種のみの繁殖を行なうブリーダーとがあります。最大の利点は、常時子犬がいると言う点にあります。
価格が安ければいい、希望の犬種でさえあれば、どんな犬でも良いと言う人や、思い立ったらすぐに欲しいと言う
人には、値段も、流通マージンが無い分は安いのが普通ですから、お薦めなのかも知れません。

最も当たり外れがあるのは、特定犬種のみを扱う兼業ブリーダー、いわゆる、セミプロの人達です。
ある特定の犬種に限っていますから、その犬種に限っては並外れた知識を持っていますし、犬の飼い方に関しても一家言を持っています。好ましい常識であれば何ら問題はないのですが、中には家庭犬としては全く無意味な、
むしろ不都合な犬の扱いや管理を、時には危険な感覚を押し付けてくる人もいます。
それを何も知らない人が、真に受けて育てて、手遅れになった頃になって相談してくるケースも多いのです。
それで生計を立てていない分値段が安いかというと、その逆が多いのです。
「そこらのペットショップで売っているような犬とは、犬が違います」といって、時には倍以上もするのです。
実際その通りで、特定の目的を持って飼う人にとってはその値段を出しても惜しくない犬もいるのですが、
なかには、「値段が高ければ良い犬だと思う無知な小金持ち」を相手に、いかに愛犬家の味方のような顔をして、それらしい付加価値をとりつくろうかに終始している人も多いのです。

中には、高く売るのは親切だと公言する人すらいます。
その論法はといえば、「飼い主にすれば、うちの犬は、50万円の犬だといって自慢の種になるし、
犬にすれば、高いお金を出したのだからといって、大切に育てて貰える。そして私は儲かる。
これこそ大岡裁きの三方一両損ならぬ三方一両得だ」というのです。
こればかりは、買い手の側にも問題のある人が多いと言う現実を考えさせられる意見でもあります。

実際のところ、単に金儲けの一手段として犬の繁殖をしている人と、その犬種を本当に愛好し、
その繁栄と啓蒙のために繁殖している人との見極めは意外に難しいものです。

訓練所
中型犬や大型犬の場合は、訓練所から買われる場合も多いようです。
看板は訓練所と出していても、実態は犬の売買が専門のところもありますので一概には言えませんが、
訓練所では、その後の訓練での収益を当て込んでいますので、犬の販売自体で暴利を求めはしないものです。

一般家庭
いわゆる素人繁殖は、プロが高い理由を考えれば、ペットショップの一般価格の半値程度以下なのが本来です。
ところが実際はそうとばかりとは言えません。なぜなら、自分がその犬を買った時の金額が基準となるからです。そして、どうしても自分の愛犬に対する評価は、客観的評価に比べて、高くなりがちです。
全く知識をもたずに、あるいは、とんでもなく偏った知識で繁殖をしている方も多いのが現実ですし、
こうしたケースでは、遺伝的に重大な欠点を持つ事もあります。
また、そうした方から犬を譲り受けて、親元の言う事だからと、鵜呑みにして育てての失敗も多く見聞きします。 しかしながら、正しい知識をもった人の指導に基づく繁殖であれば、子犬が充分な愛情と管理を受けられて育っている事などから、最もお薦めできます。
この場合は、まさに、繁殖者の人柄を見る事と、母犬の性格を見て決める事です。



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