100飼育編
飼育編 

109身を委ねること
身を委ねること
子犬にまず教えるべきことは、人を好きにさせることと、人に身を委ねることです。
とくに甘噛みと言われる子犬のじゃれ付き行為への対応ですが、犬自身が意識的に行なった行動に対して、
それがもたらす結果に応じて、その後の行動に変化がうまれます。子犬の試みにどう対応するかが重要です。
力の弱い、まだ何もわからない子犬を力ずくで抑え込んだりしたら性格が歪むであるとか、信頼関係を壊すなどという馬鹿げた意見を言う人がたくさんいますが、馬鹿も休み休み言えとは、まさにこのことです。
力で抑え込まれることによって相手の強さを知り、頼りがいを感じるのです。 これこそが信頼の頼なのです。

力の弱いうちだからこそ受け入れることができるし、どなたにでも行なうことができるのです。
何もわからないからこそ、子犬にもわかる本能である「力」をもって教えるのです。
何もわからない時期だからこそ、当たり前のこととして素直に受け入れ身につけることができるのです。
だいたいそんな程度のことで歪む性格の犬であるなら、稟性欠如であり繁殖者にクレームをつけるべき問題です。もっともそのような犬を繁殖し平気で販売するような人では、クレームの本質を到底理解できないでしょうが。

強いものを恐れると同時に、強いものに惹かれるのが、犬の持つ自己保存本能なのです。
人間がいかに道徳観や倫理観から否定しようとも、イヌという動物にとっては、身体的な力というものが、
もっとも魅力的な能力なのであり、理解しやすく、受け入れやすい能力なのです。
「強いものに従う」ということは、ただ単に怖いから従うのではなく、逆に安心できるから従うのです。
人間の手は神の手であることを教えるのは、認識の特定化ができる以前に行なうことがポイントです。

犬に教える時期についても、「子犬のうちはのびのびと」「いくつになってからでも教えられます」 などの意見もあり迷う人も多いでしょう。 「三つ子の魂、百までも」という諺があります。
いわゆる「芸」を教え込むのなら、またさまざまな「科目の訓練」を教えるのならば、犬が何才になってからでも教えることはできます。 しかし人でいう「人間性」を身に付けさせる事ができる時期は、ごく限られています。
人間の子供でも同じですが、国語・算数といった教科の科目を教えるのは、それに適した、ある程度の年齢に達してからになるのでしょうが、だからといって、それ以前は何でも子供のしたい放題にさせ、返事や挨拶はおろか、茶碗の持ち方や、服の着方等すら教えない親など、いるものでしょうか。
それなのに、こと犬となると、「本に書いてあった」などといって、本当に何も教えない人が、大勢いるのです。
こうした誤解を生む原因に「しつけ」と「訓練」が、時に同じ意味で、 時に異なる意味で使われる事があります。



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