150訓練編
訓練編

153伏せの教え方
伏せの教え方
 
 命令用語(号令)としては、「フセ」「ダウン」などです。
この科目は、一般的な割に、意外に教えるのに苦労される方が多い様です。
犬にとっては、服従心を要求される姿勢である事も、教えにくい一因なのかもしれませんが、逆に言えば、
その分しっかり教えておきたいものです。

訓練を進める上での、段階的なものは「座れ」の教え方と同じなので、割愛します。
右手を開いて、犬の顔の上方から、鼻先をかすめて下に降ろすのが、「伏せ」の視符です。
最初の段階では、犬を座らせた姿勢から、犬と対面して座り、両手で、犬の両前足を握って前方に引き寄せます。
こうして犬を伏せた状態にさせてから充分に誉めてあげます。
この段階の練習を充分に行なっておくと、この先の段階で、余分な強制を必要としなくなります。
初めのうちは犬が腰を崩したり、寝転んだりしてしまってもかまいません。

次第に、犬が抵抗なく伏せの姿勢を取る様になったら次の段階に入ります。
犬を自分の左側に座らせて、左手にリードをできるかぎり短く持ちます。
そして「フセ」の声符をかけて、右手は視符を行ない、同時に左手の紐を、地面まで引き下ろします。
犬が伏せる事を嫌がる様でしたら、紐を何回かに分けて、ショックを与える様に引いて下さい。
更に強情な犬に対しては、紐を右手で引く様にして、あなたの左脇に犬の肩口を抱え込み、自分の胸で犬の頭部を押え込みます。そして左手で、犬の両前足をつかんで前に引きます。
込み入った表現をしましたが、要はあなたの全身を使ってでも、犬を押え込んで頂きたいのです。
この段階で必要なものは、テクニック等ではなく、根気と強引さだと考えて下さい。

もちろん、犬を伏せさせるには、他にも色々な方法があります。
そのうち最も安易な方法といえば、左手で紐を下に引くと同時に、右手に持った餌を犬の鼻先から、地面近くに覆い隠す様にして教える、いわゆる、餌で釣る方法です。
または、やや不安定な高台に犬を乗せる事によって伏せをさせたり、あるいは突然に右手を大きく振りあげる事によって犬を伏せ込ませたりする方法もあります。

しかし初めにも述べた様にこの科目は、最も犬に服従心を要求する科目なだけに、できる限り先に述べたやり方で教えて頂きたいのです。
ただし犬の性格に依っては、かなり無理強いして教える事にもなりますので、犬が伏せた時には、座れを教えた時以上に、思いきりほめてあげる様にして下さい。
犬の力が強すぎて伏せさせることができない場合には、犬を左横に座らせた状態で紐を右手に軽く弛ませて持ち、
「フセ」の声符と同時に右手を上にあげながら、紐の中央部分を左足で踏み押さえます。
しばらく抵抗してもまず伏せるものです。 この方法はかなり強引なさせ方になりますので、犬の性格によっては、
「天罰」の感覚を 用いたほうが良い事が多い様です。犬が伏せるまで声符だけはかけ続けますが、なるべく体は直立で、正面を向いたまま、犬の方は全く見ないで、そしらぬ素振りで、機械的に紐を踏むのです。
犬が伏せた後、充分誉める事は忘れないで下さい。

なお、つけ加えておきますが、体で覆いかぶさったり、紐を引いてショックを与えたり、紐を踏んで犬の首を引き下ろしたりと、かなり手荒な表現で述べましたが、これらはあくまでも犬を伏せさせるための誘導であり補助なのであって、体罰ではありません。犬がやらないからと言って怒ってするのであってはなりません。
同じ強さの強制であっても、怒ってする強制と、誘導としてする強制とでは、犬に与える結果は全く違うのです。

家庭犬であれば、腰を崩す事は気にしないで良いでしょうが、横たわってしまう犬は、ある程度の誘導で犬が伏せる様になった頃から直させる様にしましょう。犬を前に引きずる様な心積もりで紐を前に引く方法もありますが、
「座れ」と「伏せ」を交互に、やや速いテンポで繰り返させる練習を行なえば自然に直ってしまうものです。
腰を崩す犬についても同じ方法で直ります。
犬の訓練を始めてみたら、意外に面白くなって、さらに上のレベルまで訓練をしてみたいと思っている方は、
「伏せ」(腰を崩さない)と、「休め」「ステイ」(腰を崩す—長時間待たせる時に使う)を、早い時期から
区別して教えるのがよいでしょう。


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