570体罰
体 罰



577訓練中に用いられる罰
訓練中に用いられる罰
  同じ方法の同じ強さの罰であっても、教えている段階によっては、異なる種類の罰となることもあります。
罰を与える際に言葉をかけた方が良いのか、罰の後のフォローをした方がいいのかどうかということも、当然に、
それぞれ違ってきます。



例えば、脚側行進の教え始めに、まず紐の末端だけをしっかりと持って、 飼い主になるべくわがままに歩いてもらう方法があります。
犬に、「人間が犬に併せて歩くのではなく、犬が人間に併せて歩くのだ」という事を教える、
一つの主従関係を確立する方法です。 犬が前に出たら、飼い主は即座に向きを変えて反対方向に歩きだすのです。 犬が左に行けば、飼い主は右にといった要領です。
当然、向きを変えた直後に、 紐が張ると同時に、犬の首に、チェ−ンカラ−を通してショックが伝えられます。
「飼い主から離れて勝手に行こうとしたら、首に不快なショックがあった」という条件付けをしながら、その不快を避けるために、「飼い主に併せて歩いていたら、撫でてほめてくれた」という条件付けをしていくのです。

この時の首へのショックは、犬に不快を与えるための「罰」であって、決して犬を叱っている訳ではありません。例えこの時、犬が、飼い主に目も呉れずに勢いよくそのまま進もうとして、飼い主が向きを変えた途端に、
犬がもんどり返る程の、強いショックを与える事になろうとも同じ事です。

この罰を見て、可哀そうだと思う方が非常にたくさんいます。虐待だと騒ぎたてる人もいます。
ところがそうした人の多くは、繋留されて飼われている犬が、目の前を横切った猫を追いかけようと 杭を引き抜かんばかりに引っ張る様子を見たときには、ほとんどそうは思わないのです。
すなわち、相手が受けた苦痛を思いやってではなく、自分が直接手を下すことを嫌がっているにすぎないのです。

さて話を本題に戻して、脚側行進ができる様になったその同じ犬が、 何かの時に飼い主から離れて勝手に行こうとした際に、前回と同じ強さで犬の首にショックを与えたとして、この時の飼い主の行為は、「叱る」なのです。

犬に教える段階での「罰」は、基本的に、首輪へのショックを用いるのが良いと思います。
なぜなら、この時の紐を引く手の動きは、そのまま、犬への「視符」に繋がるからです。
歩きながら、左手で軽く紐を体側に引き寄せる動作は、左手で、左の太腿を叩く「アトエ」の合図ですし、
犬を座らせる時に右手に持った紐を上げて犬の首輪を引き上げる動作は、「スワレ」の合図。
犬を伏せさせるために右手に紐を持って、首輪を引き下ろす際の右手の動作は「フセ」の合図なのです。

このように「罰」は、教える側の意図に沿い、訓練の進行と共に軽減、変化しうるものでなければなりません。
この「教える段階」での「罰」は、「叱る」ために与えるのではなく、犬に不快を与えるためのものですから、
犬に、あなたが「罰」を与えた事を気付かれない方が効果的な事も多くあります。
「人為的天罰」と呼んでいますが、犬が好ましくない行動をとった瞬間に、
叱る素振りは全く見せずに、 罰のみを加えます。
例えば、吠えて困る犬に対して教える時に、犬が吠えようとする瞬間、犬を驚かせる様に鎖を投げつけます。
この時なるべくであれば、犬にあなたが投げたのだと悟られない様に注意して下さい。
あたかも、天罰が下ったかの様な罰し方が、相当の効果を生みます。  


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