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犬をかう前に

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犬は選んで
 
犬はその先の永い将来にわたって「買い替えのきく品物」ではありません。
本来、飼う前にもっと良く考えて犬を選ぶべきなのです。

実際に飼ってしまえば、どんな犬でも可愛いものです。
そして、『うちの犬は、世界一』なのです。
だからといって、どんな犬でも同じだという事は、決してありません。

考えて見れば当り前の事ですが、犬は、人間が「十人十色」といわれるそんな比ではなく、
犬種や血統、また、その個体によって、様々な能力や品性に非常に大きな差があります。
これから犬を飼おうとする方にすれば、尚更どんな犬でも良いという訳ではないでしょう。

車を買う時には、ほとんどの方が相当に検討を重ねます。確かに高額な買い物ですからそれも必要でしょう。
雑誌を読んで、カタログを見て、実物を見て、挙句は、試乗までしてやっと決めるのです。
非常に乱暴なものの言い方をしてしまえば、乗用車であれば、どこのメーカーの、どの車種を選んでも
そうたいしては変わりません・・・犬の種類の違いに比べれば。
犬をどれでも同じと考える方は、免許を取ったばかりのおばさんが4トンダンプを買うような、
あるいは、F1レーシングカーを買うような、そんな真似をしているのです。  

犬を選ぶ上でのポイント 初めに考える事は、どんな犬種にするかという事でしょう。
非常に安易に、そこまでは決まっている方も多いでしょう。 更にそれから先の段階でも多くの失敗があります。
どういった血統の犬を選ぶのかも重要な要素ですし、それ以前に、良い犬の基準も、しっかり考えて下さい。

例えば、展覧会を主流とした血統の良さというのは、家族の一員として良い犬をお望みの方には、
さほどの価値を持たないはずですし、訓練性能の良い犬も、多くの方には逆に扱いにくい犬になってしまう場合が多いのです。
それらよりも、どんな環境のもとで繁殖されたのかということの方が、ある意味で血統以上に大切な要素です。

最後に個体選びですが、雄か雌かという選択にも熟考をすべきですし、同じ兄弟の中で一番大きな子を選ぶとか、
呼んだら真っ先に来る子を選ぶといった俗説にも惑わされない必要があります。
こうした選び方では、逆に兄弟の中で、最も支配性の高い子や、行動性の高い子を選んでしまうことがあります。
それ自体は、もちろん悪いとは言えませんが、家庭犬として考えたときには、扱いにくい要素となります。

生まれ育った環境を考える どこから買うのかを考える時に、考えなければいけない問題は、価格などではなく、
もっと大切な事があるのです。それは、どんな環境で育てられた犬を選ぶかということなのです。
子犬の将来を決定づける上での、最も大事な期間は生後、30日から120日迄の三ヶ月間であると考えます。
この期間こそが、その個体の、社会性を形成するのです。

両親犬の遺伝的形質も大切ですが、その後の授乳期から離乳期までの間に、母犬や兄弟犬から、また管理者、
あるいは周囲を取り巻くさまざまな状況から受ける影響を忘れてはなりません。
この事は、過保護的扱いを奨励しているのではありません。
性格の良好な母犬、第二の母である管理者からの関与、兄弟犬との競争や遊び、様々な悪環境的要因に対する、
適度な馴致を必要とするのです。
大量繁殖所で、管理の手が行き届かずに、常に汚れた新聞紙の上で、寝起きして育てられた子犬や、
ペットショップの陳列ケースの中で、閉店時間から翌日の開店時間迄、ずっとウンチやオシッコの上に寝ていた子犬を、
家庭に迎えて、「さあトイレのしつけを」と頑張ったとしても、どれほどに大変なことであるかは、言うまでもないでしょう。

同様に、母体の消耗を防ぐために生後ほんの数日で母犬から離されて人間の手で育てられた犬が、
本来犬として身に付けているべき社会性や基本的な上下関係そのものが欠けている事や、
授乳中も唸って飼い主さえをも近づけようとしない母犬に育てられた子犬が、人を怖がるようになるなど、
数え上げればきりがないほどです。
この様に、悪い管理の元での影響は、発育や、皮膚病や、腸内寄生虫による感染をも含めた健康状態など
といった外観上だけでなく、性格その他、内面的なものにも及ぶのです。

人が作る環境が、犬を作ります。
良い環境とはどういうものかを知らなければ、良い環境を作る事はできません。
つまり大切なのは、繁殖者の知識と人間性、そして良い犬を世に送り出すという姿勢なのです。


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