相談=他人に興奮する犬 |
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人に会うと興奮する犬 半年になる、ラブラドール・レトリバーの雌を飼っています。 とても人なつこい明るい性格ですが、散歩中に他の人に声を掛けられると大きく体を揺すりながら近づいていき、すぐに跳びついてしまいます。(中略)小さいときから、わりあいに気をつけて厳しく育てたので、私や家族に対して跳び付くことは、ほとんどありません。 |
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愛犬をきちんと訓練をしても、つい甘やかせるがために、普段は言うことをきかなくなってしまうという方がほとんどではないでしょうか。 家庭犬の訓練の難しさというのは、盲導犬や警察犬といった実役使役犬の訓練と違い、100%の服従度を要求されないという点にあります。 この事が、犬にすれば、訓練そのものを理解しにくい原因となると同時に、「言うことをきかなくてもよい」という事を学んでしまうのです。 そして、それが最も問題となるのが、「人前で、特に犬好きな人や犬を可愛がってくれる人の前で」ということになります。 この方のように、家では良いが、表では駄目とか、来客があると駄目というケースは多いのです。 この最大の原因は、弁別条件付けと呼ばれるものですが、犬は飼い主の態度の違いを機敏に察知します。 いくら家で厳しくしても、表では表で、また都度、きちんとさせるようにしなければいけないわけです。 そうは言っても、好き勝手にさせる事を自由だとはきちがえて、また甘やかす事が愛情だと思っている人が大勢いる以上、現実の問題として街中で練習することはなかなか難しいものがあります。 最近は、各地でしつけ方教室が催されているようですので、そうした、ある程度犬のしつけに責任を持っている方が集まる場を利用されて練習を重ねるとよいでしょう。しかし、そうした所で相当にできるようになっても、いつも甘やかさせる人に出会った時にはきちんとできないのが普通です。 いつも言いますが、同じ「おすわり」一つをとってみても、食餌を貰う時にするのと散歩に行く時に門の前でするのとでは随分難しさが違いますし、家の中でするのと、他の犬のいる所や人ごみの中、あるいは浜辺でといった具合に、時や場所、または雰囲気が違えばその難易度は全く違うのです。 教える際には自分の犬の性格を充分に知って、自分の犬にはどの環境が最も易しく、あるいは難しいのかを、きちんと知って、必ず簡単なところから確実にできるように教えていくようにしましょう。 そうした事を知らないままに教えていくと、犬に対して高望みばかりを強要する事になり、訓練ではなく単なる抑圧や無理強いになり、かえって悪い結果をもたらします。 そして次に言えることは、こうした問題行動を生むケ−スというのは、非常に失礼な表現ながら、「外ヅラの良いかた」に多く見受けられるようです。 家庭で普段犬を叱るときには、鬼の様な顔をして、狼だってすくんでしまいそうな声を出すのに、玄関のチャイムや電話のベルが鳴った途端に女神様のような表情になり、ウグイスのような声で話し始めるのです。 途中で犬が悪さを始めても、優しい口調で「○○○ちゃん、イケマセン。」これでは、犬が言うことをきくはずがありません。 まあこれほど極端ではないでしょうが、若干の心当たりはあるという方が多いのではないでしょうか。 犬は、口調を含めた「言葉」というものと、その時受けた「罰」とを結び付けて理解しているのですから、普段叱った時と同じ口調でなければならないのです。といって、せっかくあなたが今日まで築きあげた、「優しいおばさま」のイメ−ジを壊すのも残念ですから、人前でも怒鳴りなさいと言うのではありません。 むしろ発想を逆にして、普段から、人前でも出せる程度の声で犬を叱るように。つまり、普段の家庭にいても、犬を強く制する時ほど、優しい静かな口調を心掛けてほしいのです。といっても、優しい言葉を掛けながら罰を与えたり、その逆に、怒鳴りながら撫でてあげたりということは、案外と難しいものです。 そこでおすすめしたいのは、以前「賞と罰」について述べた時に説明した投鎖(アルミニュウム・チェーンを5~6連に切ったもの)の使用です。人間の感情に左右されず、常に一定の音を発しますし、家族のどなたが使っても同じ効果を生みます。また、周囲の方に犬を叱っている印象を与えないで済むという利点もあります。 では次に具体的な対処方法について考える前に質問ですが、散歩の時、紐は付けていないのでしょうか? もし付けていないのでしたら、ご愛犬にそうした癖があることを承知しながら紐を放していること自体、あなたの良識を疑わざるを得ません。しつけの相談以前の問題です。そうした自称愛犬家こそが、犬嫌いの人を刺激し、善良な愛犬家の行動範囲を狭めていることを知っておいてください。 また、紐を付けていても、犬を制する事ができないのであれば、それでは何の意味もありません。 一口に「できない」といっても、能力的にやろうとしてもできない場合と、できる能力がありながら、やろうとしないからできない場合とがあります。 ある有名な人の言葉に、「我々は、できるからするのではなく、しなければならないからするのである」というものがあります。 能力的にできないといっても、現状ではできない事であっても、教わることによって、また、練習することによって、できるようになるのです。 そもそも、訓練とは、おしえ(訓)ねる(練)事です。 いつまでも、できることだけをさせていたのでは、いつまでたっても、一ランク上の事はできるようにはならないのです。 一ランク上のことを相手に望む事は、相手に「やればできる」能力を有していると認める事でもあるのです。 「犬を訓練する事を、かわいそうだと思う人は、犬をバカにしている」と私が言う理由はそこにあります。 さて、前者には、体力的理由による力負けがあります。実際、中型以上の大きさの犬は、何らしつけもせずに 育ててしまったら、一般的な日本人の女性では力負けすることも多いでしょう。 そうならないためには、基本的なコミュニケーションを、子犬の頃からとるべきでしょう。 そもそも、犬との散歩が、力勝負の場になること自体がおかしいのです。 もしあなたが犬を力ずくで引き回したいのならば、しつけ教室に通うよりも、トレーニング・ジムに通った方が向いているのです。 犬が大きくなっていて完全に力負けする状況でしたら、訓練士について、訓練を教わったほうが良いでしょう。 まず犬に、止まれの意味の「待て」を科目として犬に教え込んでもらい、その後、紐の引き方とそのタイミングをあなた自身が練習することが必要でしょう。 文章ではなかなかお教えしにくいものですし、私の表現は、その一部分だけを捉えてお読みになると誤解を受けやすいのですが、敢えていうならば、犬が動き出そうとするやいなや「マテ」の号令と同時に、犬に誰がしたのか気づかれないように、思いきり強いショックを一瞬の内に与える事。そして、犬が驚いて、またはそのショックに怯えて、リアクションを起こしたらすかさず、大げさに誉めまくったり抱きかかえて慰めてあげたりする事。 あくまでもショックは天罰だと思って、また何度も強いショックを与えなくて済む様に、一回あるいはほんの数回で教え込むようにして下さい。 後者のやろうとしないからできないという理由には、犬がかわいそうな気がして、無意識のうちに犬に引かせてしまうというケースや、人目を気にして犬を制する事ができないといった事があります。 これらについては、機をみて、また述べたいとは思いますが、しつけのしかたとは別の話です。 しつけにおいて大切なことは、教え方のテクニック以前に、しつける側の姿勢にあります。 犬の幸せのためには、犬にとって、あなたが良いリーダーになることです。 そのためには、愛犬と共に、あなた自身の訓練です。 |
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