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多くの飼い主は気がついていませんが、吠える事・噛む事・跳びつく事・引っ張る事など、
問題となる行動の多くが、無意識の内に、飼い主自身が、犬に教え込んでいるのです。
飼い主が教えようと意識していようといまいとに関係なく、日々の生活や飼い主との関わりの中で、
犬は、自らの経験を通して、様々なことを学習していきます。
吠えて困るという犬の場合でいえば、何かのきっかけで犬が吠えた時に、飼い主が犬を叱りにいったとします。
何ら問題がない様ですが、飼い主は犬を叱ったつもりでいても、犬にしてみれば、「吠えたら飼い主が来て、
励ましてくれた」という事を覚えるのです。それどころか、犬が吠えた時に、静かにしなさいといって、
食べ物や、おもちゃを与える人すらあります。確かに、その一瞬は犬も吠えるのをやめるでしょうが、
犬は、吠えれば食べ物やおもちゃが貰えるという事を学習するのです。
「学習」とは、「規則性の発見」にほかなりません。
最近のパソコンのソフトをみると、三才~五才向けなどという幼児教育の物まで出回っています。
機械の苦手な大人にとっては、分厚いマニュアルを見ただけで投げ出してしまいそうなものを、字も読めない
幼児が、見よう見まねで試行錯誤するうちに、あっという間に使いこなすようになるのです。
何故、マニュアルも読めない子供が、そうした複雑な機能の機械を扱えるようになるのかといえば、
それには「規則の一貫性」と、「結果に対する興味」にあります。
規則の一貫性とは、犬がある行動をとったときに、必ず同じ結果を招く事を言います。
その結果が、犬にとって好きな事であれば、犬は、その行動を繰り返し行うようになるし、
反対に、嫌な事であれば、次第にその行動をおこさなくなる事は、以前に述べた通りです。
例えば、室内のドアに大きなボタンを付けて、そのボタンを押すとドアの下から食べ物が出てくる装置を
作ったとします。何も教えずに、その室内に犬を閉じ込めておいた時、その犬は、ずっとその装置に気付かないかも知れませんし、何かの偶然に、そのボタンにぶつかり、食べ物を得るかも知れません。
さらに、それが単なる偶然で終わってしまう犬もいれば、偶然を繰り返すうちに「ボタンを押すと食べ物が
出てくる」という規則性に気が付き、いつでも自分の気が向いた時に、食べ物を得るようになる犬もいます。
毎日の犬との生活の中で特定の規則性をつくり、それを犬に気付かせる事こそが、しつけの原点なのです。
犬に学習をさせるためには、まず飼い主が規則を作り、その規則を守らせる一貫した姿勢を持つ必要と、
同時に、犬にとって魅力ある結果を与える必要があります。
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