550二次性の罰
二次性の罰     叱 る  

556叱らないことの問題点
叱らないことの問題点
 
叱ることや体罰などの積極的な罰は、その効果以上に、その失敗や弊害が犬の身体や行動にすぐに現れますので、誰の目にも見えるのです。逆に、無視するような消極的な罰であれば、即効的な効果もすぐには見えませんが、
弊害もまた、目に見えるようなことはありません。

叱らないトレーニングに害はないのでしょうか。 ホメオパシーと呼ばれる代替療法というものがあります。
それこそ科学的に言えば、副作用もないが治療効果もないものとされます。
もしもその通りであるならば、それは確実に害があります。
なぜなら、効果のないものを実施することにより、有益な療法を受ける機を失するからです。

たちの悪いことに、そうしたものは、「即効性はありませんが、続けていけば、」「個体差がありますので」 と
言って、効果の時期に対して長期かつ不定をあらかじめ謳っているのです。
それゆえに、効果のないことに気が付いた時には、本来の治療方法でも手遅れの状態になってしまいます。
さらには、「消去バーストといい効果が表れる前触れの一段階として、一時的に症状が悪化することがあります」と、あらかじめ伝えられれば、効果がないことに気が付くのが、いっそうに遅れてしまいます。

同じことが、叱らないトレーニングにおいても言えると私は考えます。
従順性を身に付けることができる幼児期に、従わせることをさせない。 我慢癖を身に付けるべき時期に、
我慢をさせない。善悪の判断基準を養う時期に怒られない。 それが正しいトレーニングなのでしょうか。
叱られないことにより、何をしても許される体験や、要求すれば叶う体験を積み重ねることそのものが、
重大な害になるのではないでしょうか。  



して欲しくない行動をやめさせるには、どうすればいいのでしょうか?
「してしまったときには叱らずに、ただ無視してください、そして、しなかったときに褒めてあげましょう。」
叱ることはいけない事だとする理論家の多くが、このように教えてくれます。

「うちの息子が先日、万引きで捕まったのですが・・・・・・。」
これをどうやってほめて直すのかを、教えてもらいたいものです。
おそらくはこの息子も、店に入るたびに毎回、万引きする訳ではないでしょう。
とすれば、普段は普通にお金を払って買い物をしているということになります。
息子がレジで支払いをしているのを見かけた時に、「ちゃんとお金を払って買い物をして偉いね。」
と、褒めてあげれば、この子が万引きをしなくなると思いますか?

跳びつかなかったときに、咬まなかったときに、吠えなかったときに、マウンティングしなかったときに褒める。あるいは止めたときに褒める。はたして、犬は何をほめられたのかが分かるものなのでしょうか。
「した行動」は一つであり、その行動を行ったという自らの意識がある場合もあります。
しかし、「しなかった行動」というのは無数にあり、当然にその意識もありません。

もちろん、しようと思ったけれどしなかった場合には、その意識もありますが、その見極めは困難ですし、
行動学的見地からは「思った」のは、行動ではありませんので、判定の対象外なのです。
しなかった時に褒められて、「何をしなかったから」褒められたのかが、わかるものなのでしょうか?

噛まれたらどうすればよいでしょうかという質問に対して、「やめたときにほめてあげましょう。」
と、もっともらしく言われることがあります。
あなたが、気に食わない奴をぶん殴ったとしましょう。
相手をボコボコに殴って、「ああ~すっきりした」 と、その時にあなたは褒められるのです。
さて、あなたは何を褒められたと思うでしょうか?




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