訓練編
待ての教え方 |
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「マテ」の教え方 「止まれ」の意味の待てと、「留まれ」の意味の「待て」があります。 止まれのマテは、事故を未然に防止する上で非常に有用ですので、是非とも強制を使って教えたいものです。 留まれの「マテ」は、他の科目と違って、何もしない事を教えるため概念的であり、 犬にしてみれば、ややわかりにくい部分があります。 |
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止まるという意味の「待て」から教えてみましょう。 声符は、「マテ」「トマレ」「ストップ」「ウェイト」などです。 読み進むにつれておわかり頂けると思いますが これは紐をたるませる習慣を身に付ける第一歩となります。 つまり、歩きながらこの練習を行なうことは、脚側行進の基本となりますし、後ずさりしながら連続して行なって頂けば、招呼の基礎となりますので、犬に初めて引き紐を付けた頃から教えるようにするのが良いでしょう。 犬が、飼い主の周りにまとわりついて離れない場合は、一つ先の段階から始めます。 こうした場合は、犬の性格が弱いか、飼い主との良いコミュニケーションがとれているかのどちらかですので、 何れにしても強いショックは必要としません。 逆に、一目散に飛び出して行くタイプ、あるいは、そのように育ててしまった犬の場合は、初めの一回で、 充分な効果をあげられるように、あらかじめ、紐と心の準備をしっかりしておいてからとりかかって下さい。 このような犬の場合は、まず、飼い主の方は、引き紐の末端だけをしっかりと持つ事を念頭において下さい。 紐の途中を持ってしまうと、犬が飛び出す勢いを利用して教えるこの方法の効果が無くなります。 右手で、紐の末端を持ち、とりあえずは、左手で、犬の首輪を持って犬を抑えておきます。 左手を離すと同時に、犬は、飛び出して行く訳ですから、素早く、左手は、右手に添えて紐の末端を持ちます。 そして、犬が引き紐の長さ分離れる(紐が、ピンと張る寸前)その瞬間に、瞬発的に引き紐を引いて下さい。 紐で引き寄せるのではありません。あくまでも瞬間だけです。 この時に犬と綱引きをしてしまったのでは、犬は一層引くようになります。 紐を引いた直後にはすぐに紐をたるませることが肝要です。 その一瞬は、犬がキャインと声をあげる、あるいは、もんどり返る位で構いません。 最低でも、犬が止まって飼い主を見る程度の強さは不可欠です。 逆に、強さが足りずに何度も何度も引かなければならないようですと、 結果的には「教えている」のではなく、只「犬の首を鍛えている」事にしかなりません。 これだけの理由ではありませんが、犬を鎖で繋いで飼うことを私は賛成しません。 繋がれて飼っている犬は、相当に強く引かなければ、犬にはショックとして伝わりません。 人間の心理とは面白いもので、そうした飼い方をしている人に限って、犬が杭を抜かんばかりに跳び回っていても 平気で、杭の代わりに自分が紐を持った時には、あまり強く引いては、かわいそうだと言い出すのです。 また、どうしてもタイミングが間に合わなくて上手にできない方は、今お使いの引き紐よりも少し長めの引き紐に 代えると一呼吸余裕を持つ事ができますが、あまり長すぎるものを使うと犬に加速がつく分、かえって大変になります。2メートル以内の方が良いでしょう。 さて、では次の段階に進みましょう。 「マテ」の声符と、首輪のショックを犬に結び付けて理解させます。行なうこと自体は、前段階と同じですが、 必ず、紐を引く寸前に「マテ」の号令を与えてください。それまで程、強く引く必要はありません。 先程の最低程度、つまり、犬が止まって飼い主を見る程度(犬の性格、大きさ、月齢によって全然違います。)の ショックを使うようにしながら、練習して下さい。 そして立ち止まって飼い主を見ている犬に、すぐさま駆け寄って誉めてあげる事も忘れないでください。 尚この練習中は、それ以外の細かい事は、一切気にする必要はありません。 犬が立とうが、座ろうが寝そべろうが、右にいても後ろにいても構いません。 また、じゃれついて来ても、ただ無視すればそれで結構です。 紐がたるんでさえいれば、つまり、飼い主から紐の長さ分以上離れなければそれでいいのです。 ここでは、飼い主は紐をたるませておく事を、犬は行動の中心は飼い主だという事を学べばいいだけなのです。 飼い主から離れない犬については、自分が少し歩きながら行なってみて下さい。 そして、飼い主から気をそらせて何かに興味をひかれた様子が見えたら、軽くショックを使います。 では次に、留まれの「待て」の教え方です。 声符は、「マテ」「ウェイト」「ステイ」などです。 教え始める時期は、「座れ」「伏せ」を教え終えた頃が良いでしょう。 この科目は他の科目と違って「何もしない事」を教えるため、概念的で犬にすればわかりにくい部分があります。 また何もしていない状態(動かないままでいる訳ですが)で、誉めたり叱ったりしなければいけないのですから、 教える側にもそれなりの、細やかな気配りが必要です。 まず、誉め方の注意点としては、犬をはしゃがせるような誉め方をしないこと、つまり、喜ばせるのではなく、 犬に安心感を与えるような落ち着かせる誉め方を心掛けてください。 叱る場合にも強い叱り方は逆効果だと心得てください。 むしろ、淡々と黙ってやり直させる程度のほうが、効果が上がります。 この科目では特に、失敗を直して教えるよりも、成功を積み重ねて教えるほうが良いでしょう。 初めは犬のすぐ近くにいて待たせますが、次第に犬との距離を広げ、 飼い主が隠れてしまっても待てるように教えたいのであればなおさら、成功の積み重ねは重要です。 また、犬が動いてしまう度に、犬の元に戻って叱っていると、犬は叱られる事ばかり気にして一層不安になり、 また立ち上がるという悪循環を起こし、挙句に、飼い主が近寄ると逃げるようにさえなります。 同じ様な事が、誉める上でもあります。 少し離れて待たせられるようになると、犬の元に戻るとすぐに誉めてしまう方がいます。 これを繰り返していると、次第に犬は、飼い主が戻る気配を見せただけで、 駆け寄ってきてしまうようになります。こうならないためには、段階を踏まえながら、 誉めるタイミングを遅らせるなど、常に「犬の理解の仕方」というものを考えながら教えてあげてください。 一般的な教え方を述べましょう。 まず、犬を自分の左横に伏せさせます。犬を伏せさせながらあなたも犬の脇にしゃがみます。 左手に引き紐を短くもって、わずかにたるませます。 この時、紐を長くしてしまいますと、犬が動きそうになった時に、紐の長さ分犬が動いてからでないと犬を制御 できない事になりますので、なるべくナスカンの近くを持つようにして、カラーの余裕分だけをたるませるようにして下さい。右手は視符を行ないます。手の平を広げ、犬の顔の高さから犬の鼻先に向けて近づけます。 「マテ」の号令を発すると同時に、カラーのショックを犬に伝えるべく、瞬間的に左手の引き紐を引っ張ります。 これは、一種のマジックで、犬に「右手の視符と、首へのショック」とを 如何に結びつけて印象付ける事ができるかが重要です。そのために大切な事は、犬に必ずあなたの右手を見させる事です。 それには、右手を動かす前に、一度右手の指を鳴らすなどの工夫も良いでしょう。 犬が、首へのショックは人間の左手の紐の操作によるものだと気がついてしまうと、その先、犬との距離をおいて待てを教える際に不都合が出てきます。 伏せて、ある程度待てるようになったら、次は座れの姿勢で待たせることを教えて下さい。 多くの方の失敗の原因に、タイミングの悪さがあります。 「待て」の号令を掛けるのが、ほんの一呼吸遅れるがために、犬は「立っては座り、又、立っては座る」事を 覚えてしまうのです。座る事を教えているのではありません。座ったままでいる事を教えているのです。 犬が動きそうになったならできる限り素早く、その動きを制して下さい。 方法としては、犬は、顔の向いた方向に動こうとするのですから、鼻先を制するのが最も効果的です。 強さと、手の動きの速度とを飼い主の方に理解して頂くために次のような表現を使っています。 「犬の鼻の頭に蚊が止まっていると思って、その蚊を殺して下さい。」 最も大切なことなので繰り返し述べますが 犬が動いたら制するのではありません。犬が動きそうになったら制するのです。 当然この時、まだ犬は動いていないわけです。犬が動いてもいないうちに叱るなんて、と言う方がいますが、 「イケナイ・マテ」と言って鼻先を叩くのは、叱ってするわけではないのです。 あなたが自動車を運転中、一時停止の所で徐行だけしてそのまま前に出た途端に、電柱の陰に隠れていた 警察官が出てきたとしましょう。取締のためではなく、安全のための交通法規なのですから、違反するのを待って 捕まえるのではなく、こちらが違反する前に「一時停止ですよ」と言ってくれればいいのにと思いませんか。 次第に犬ができるようになってくると、誰もがすぐに距離を延ばしたがり、そこで失敗をさせることによって 犬に悪い癖を付けてしまいます。何度も言いますが、階段は、下から一段ずつ上るのが一番です。 姿勢で言うならば、伏せた姿勢、座った姿勢、立った姿勢の順に、犬は不安定になってきます。 飼い主の離れる向きとしては、右隣、犬の正面、犬の後ろの順に教えていきます。 そして闇雲に距離を延ばすことよりも、まず引き紐の距離で充分ですから、確実に待つことを先に教え込みます。 飼い主が犬の周りを回ったり、しゃがんだり跳びはねたり、またいで歩いたりなどといった様々な状況を作り、 また、他の犬が遊んでいる中、人通りの中、踏切の前でといった様に環境を変えて、あるいは、犬舎の前、 門・玄関の出口前、公園の入り口などといった、犬が先を急ぎたがる場所や状況で行なうといった事の方が、 よほど重要なのです。 次ぎに塀の角や自動車などを利用して、犬のすぐ近くで飼い主が隠れるなどして待たせる練習をします。 それらが完全にできる様になった後に、長紐を利用しながら、距離を延ばしていくべきなのです。 |
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