おとなしくてとてもいい子だと、家族からも学校からも思われていた子どもが、ある時、突然に、ほんの些細としか思えないような事で、友人、先生、あるいは親を殺してしまうといった事件も近年多く起きています。
ストレスと呼ばれる外的刺激に対処する能力は、大脳のうち前頭葉という部分が司ります。
人間で言えば、3歳から12歳の間に形成されるといわれています。
この期間にストレスに遭わなかった子どもは、対処能力を身につける事ができず、
初めてストレスに遭遇した時、本能のみによって対応をする事になります。
本能による対応とは、行動学で言えば、英語の頭文字をとって、「3F」といわれます。
すなわち、 Fleeing = 逃走 / Fighting = 闘争 / Freezing = 凍結です。
こうした3つの、いずれも極端な対応が、「自殺」「殺人」「引きこもり」といった問題に直結することは、容易におわかりいただけると思います。
昨今、「ストレス」という言葉がよく取り上げられ、犬を育てていく上においても、何かの折に口にされる方が多いようです。
そしてほとんどの方が、犬の身にふりかかる様々なストレスの要因を排除してあげることに一生懸命になり、その結果ストレスの要因に対処する能力を欠いた、いわゆる問題犬を作り上げてしまいます。
例えば、小さな子供さんをお持ちの方は、「人の嫌がることをしてはいけません」といった育て方をしているのが普通ではないのでしょうか。それをそのまま自分にも当てはめてしまい、生後60日前後で家庭に迎え入れた子犬の嫌がる事を、一切、何もせずに育て上げてしまうのです。いわば、精神的な温室育ちの犬を作りあげるのです。
正常な触覚が形成されるためには適切な触感刺激が必要なことは、深海で光刺激のない暗黒の環境では、深海魚に視覚器が形成されないのと同じことです。
「溺愛という名の虐待」の事実に気が付くべきでしょう。
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