最近では犬のトレーニングにおいても科学的という言葉が多く使われていますが、科学的トレーニング方法と 称するそのほとんど全てが、心理学の中の「行動分析学」という学問に準拠して述べられています。
「心理学」と聞くと、いかにも犬の気持ちを理解した「こころ」に基づく学問のように思われがちなのですが、 行動分析学は、「多くの心的概念は人の内部にあり、行動の原因となると考えられていますが、こうした内的な 心的概念の存在は、観察された行動そのものや行動の規則性から類推されているに過ぎず、ほとんどの場合、 客観的に観察された事象、つまり外的な行動に還元することが可能である」との観点からなされる研究です。
行動分析学においては、人間もネズミも同じ「有機体」と総称され、「有機体は刺激によって制御されている」 とされているのであって「自由意志というものは幻想である」とされているのです。 心という、見ることも証明することもできない抽象的概念を扱わず、観察可能な反射と行動のみを対象とする、 まさに、「こころ」や「自由な意志」を認めない学問なのです。
たしかに、行動分析学において導き出された行動原理は、非常に有意義なものです。 しかしながら行動分析学は数ある心理学の一分野に過ぎないのであって、唯一無二のものではありません。 科学を取り入れることは非常に重要なことですが、科学にこだわることは、教育の放棄とも言えるでしょう。
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