相談=飼い主に唸る犬 |
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まず、述べておきますが、唸るという行為は、噛むという行為の寸前であるという事です。 いつ、噛みついてもおかしくない、重大な問題行動です。 ところが多くの飼い主は非常に寛容で、何かの事故が起こってからでないと本気で問題視しないのです。 しかし実際に事故が起こってしまうと犬はそれを機に自信を持って一気に悪化してしまい、それを直す事は非常に困難になるのです。 「人を噛んだことはない」という事が、これから先も「人を噛まない」という根拠にも、約束にもなりません。 「ワンちゃんが物を食べている時は、手を出しちゃダメ。」「子犬を育てている時は、近寄ったらいけないよ」 ごく当たり前に耳にするせりふです。 日本人の中には、食事中の犬や授乳期の母犬を触ったら噛みつく方が当り前だと思っている方も多いようですが、これはあくまでも他人が触る場合であって、飼い主に対しては例えそのような時であっても、噛みつくことはおろか唸ることすら許されるべきではありません。 ( 注)ここで言うのは、そうならないように育ててくださいというのであって、すでに物を食べている時に近寄ると唸る犬に対して手を出したりしないでください。きっと噛みつかれます。 この問題点は犬種的特性、血統的問題、生育環境に起因します。ここでは、生育環境の観点から述べましょう。 庭に繋いでいて毎日食事を与えて定期的に運動をさせるといった、いわゆる単に犬を生かしているだけの飼い方をされている人と、その正反対に、人間と全く同じ扱いで部屋の中でも自由放題にさせてお飼いになっている自称愛犬家の方の、何れかの両者に多く見受けられます。 犬が飼い主を噛む場合には、大きく分けて「防御型噛咬」、「攻撃型噛咬」の二つのタイプがあります。 防御型噛咬は、一般に「窮鼠かえって猫を噛む」のように、精神的に追いつめられた結果として現れることが多く、その背景には、幼齢期の馴致の欠如があげられます。犬が噛んだからといって叱ったりすれば逆効果、犬は、いっそう怖がり、ことは悪化していきます。 攻撃型噛咬は、要は人間でいう、家庭内暴力の子供と同じ事です。 一つに、甘やかせて育てると、犬は、どんどんわがままになり、自分の意に添わぬ行動をした飼い主に対して、攻撃を加えたりします。 飼い主が甘やかして常に犬の要求に応じて行動している場合、及び、ご自分の犬が飼い主をも噛む品性の犬であることすら認識していないことがあります。つまり、ご自分は毎日の犬との付き合いの中で、ただ単に犬の嫌がることはしていないだけのことなのです。正直にいえば、こういうケースが、訓練士や、獣医師にして見れば、一番困る訳です。人間社会でも、実力者の息子などに見られるように。何しろ、飼い主は、我がまま一杯に育っている愛犬を、性格の良い子だと思い込んでいるのですから・・・・。 必要に応じて、本来なら素直に受け入れるべき事をしただけでも、犬は、鳴き騒いだり、怒って噛みついてきたりと、異様なまでの反応をするのみならず、飼い主までもがまるで、こちらが犬をいじめているかのような対応をするのです。 犬の持つ本質の中に自立心と依存心という相反する二つの性質については述べたことがあろうかとも思いますが、特に自立心の強い犬をお飼いになられた方は、こうした問題点について早くから知識をもち適した扱いを心得ておきませんと、問題が現われてからでは相当の困難を覚悟するべきであり、犬にとっても飼い主にとっても不幸な結果となります。 またもう一つには、不適切な体罰を使って、「飼い主が怖いから言うことをきく」というような育て方をした場合にみられます。 「面従腹背」(顔では従い、心の中では、そむくこと)という語がありますが、むやみな体罰は、反抗心を生み出すだけであることを再認識して頂きたいと思います。 |
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参照 訓育編=噛みついてくる 問題行動 矯正訓練 問題行動=甘噛み 問題行動=本気咬み 相談編=飼い主に唸る犬 相談編=噛みついて困る犬 |
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