問題行動=本気咬み |
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噛み癖(咬み犬)の解決方法 ※ ここでは便宜上、程度の軽いものを「噛み(かみ)」、程度の重いものを「咬み(かみ)」と表記します。 ※ 物に対する噛み付き行為は、「齧り癖」(かじりぐせ)として別行動とします。 ※ なお「癖」というのは、本来は習慣化した無意識の行動を言いますので「噛み癖」というのは不適切な表現かもしれません。 ここでは本気噛みについてを主体に述べていきます。 さまざまな問題行動の内でも一番重大で、最悪の場合には飼い続けることさえもが困難となる問題行動です。 ところが、まず一般の飼い主は自分の犬の噛みつき行動がどのような性質のものであるかを分かっていません。 そればかりか、ネットや本などで噛み癖の治し方として述べられているものの中には、 甘噛みやジャレ噛みも本気噛みも一緒くたにされているものもあります。 実際には愛玩犬のおままごと程度の噛み付きしか経験していないトレーナーもたくさんいます。 本気噛みと推察すべき状況の犬への対応で、どこで聞き込んできたのか 「犬が噛んできたら、手を引くのではなく、逆に犬の口に押し込むようにして下さい」 「噛まれても大丈夫なように、皮の手袋をして行ないましょう」など危険極まりないことが述べられていることもあります。 小型の愛玩犬であれば大丈夫かも知れませんが、柴犬クラス以上の犬の本気噛みはその程度の装備では大怪我をします。 噛み付きの種類や程度、原因をきちんと判定できない人のアドバイスを受けることは、大変に危険なことです。 たしかに犬の噛み行為の中には、その犬によって、あるいは時期的なもので、ほっておいても自然にしなくなるケースもありますし, 飼い主の対応を少し変えるだけで治まる場合も多くあります。 しかし、そのような経験の持ち主のアドバイスを受けたことによって、せっかくの治せる時期を逃してしまうケースも多いのです。 まずは一刻も早い段階で、きちんとした専門家の診察を受けることが何よりも重要です。 様々な噛み付き行為 まずは、噛み付くという行為全般について述べていきましょう。 肉食動物にとって自分以外の動物は、獲物・外敵・仲間・無関係(共生寄生を含む)の4つに大別できます。 そして噛みつく対象となるのは、獲物・外敵・仲間であり、その噛み付きの本質はそれぞれ全く異なります。 ・獲物 =攻撃 殺すまで ・外敵 =防御 退散するまで ・仲間 =闘争 決着するまで(餌/場所/配偶者争奪/子守り/など) 犬が人に噛みつく場合は、ほとんどが仲間内での噛みつき行為となりますが、 まれに獲物や外敵に対するものと同様の噛みつきも見られます。 |
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噛み付きの種類 ・遊戯 じゃれ噛み 遊戯行動 : 相手の意識に働きかけるためや、遊びとしての噛み付き 甘噛み 遊戯行動 : じゃれ噛み、喧嘩噛み、咥え噛みなどで力加減をした噛み付き 喧嘩噛み 遊戯行動 : 同等の相手に行なう主たる目的のない噛み付き ・捕獲 咥え噛み 捕捉行動 : 手や足、洋服など、動くものを捕まえようとする噛み付き 捕食噛み 捕食行動 : オヤツなどを狙った、故意または過っての噛み付き ・制御 抑え噛み 支配噛咬 : 優位な個体による制御行動 ・防御 避け噛み 払い除け行動: 頭を振ると同時にカッと歯を当ててくるような噛み付き 抵抗噛み 排除行動 : 頭を後ろに引きながら急に顔を突き出してくる噛み付き 警告咬み 警告行動 : 唸り声や鼻にしわをよせ、一噛みまたは数回に分けて軽く咬み付く 転嫁噛咬 払い除け行動: パニック時、突然に振り返って見境なく咬み掛かる ・攻撃 喧嘩咬み 闘争行動 : 食糧・場所・配偶者など、何かの獲得を目的とした咬み付き 欲求行動の遂行のための対立解消の咬み付き 襲撃咬み 攻撃行動 : 外敵や獲物に対するような咬み付き 攻撃行動 : 外敵排除のための咬み付き ・その他 かかと噛み 追い立て行動:キャトルドッグ・シープドッグに特有 空気噛み 異常行動 :空中に浮遊する何かを捕まえようとしているような噛み付き |
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犬はなぜあなたに噛みつくのか 非常に簡単に言えば、あなたが近づきすぎたからです。 もう少し適切な表現をすれば、入り込んだからです。 入り込んだ?どこに入り込んだのかと言えば、それは相手のパーソナルスペースにです。 本来であれば相手に近づきすぎた場合でも、無理に踏み込みさえしなければ、通常は噛まれる心配はありません。 一般に動物には、それぞれに逃げ始める逃走距離と攻撃を仕掛けてくる臨界距離と言うものがあります。 犬の場合は、遺伝子に組み込まれた警戒心や好奇心の強弱によって、それぞれの個体毎に大きな差があります。 逃走距離は臨界距離よりも長いので、通常であれば噛み付くより前に逃げるという選択をするのです。 子犬を抱えている、獲得した獲物を持っているなどその場を離れたくない状況にある場合や、逃げ道逃げ場を失っている場面で、 逃走距離を超えてさらに相手が臨界距離にまで近づいてきた時に初めて攻撃をしてくるのです。 いわば犬にとっても止むを得ぬ選択であることを知っておきましょう。 しかし、一旦闘うことを身に付けた犬、さらに戦いに勝利した犬や成果を上げた犬は、 今後はあらゆる場面で、いとも容易に闘うことを選択するようになります。 これが噛み癖です。 ここで言うパーソナルスペースというのは、場所だけの話ではありません。 距離や時間、行為なども含みます。 つまり、距離が近づく・時間が長引く・行為が増長するなどによって、噛みつき行動が発生することもあります。 犬を飼うということは、人と犬とが共有の空間を持つということです。 犬に専有空間を与えた場合には、それを侵略すればたとえ飼い主であろうとも排除されることになります。 予防的見地から言えば犬に専用スペースを与えないことも一つの方策でしょう。 しかし実際には、多くの人がハウスとして犬専用の場を提供していますが、それが必ずしも問題を惹き起こすわけではありません。 むしろ安心できる場を与えることは有為なことと言えましょう。 ただし、ハウスを聖域や不可侵エリアとさせてしまうことには賛同できません。 野生児的とでも言いましょうか、外飼いの犬に多く見られるような人間との関係が疎い育て方をした場合や、 和犬(日本犬)など先天的な自我や警戒心が強い個体の場合に、場所に対する占有意識の強い傾向を感じます。 さらに食器を置きっぱなしにすることや、骨や齧るための玩具などを与えたままにしておく飼い方ですと、 物に対する占有欲も相乗しがちですので注意が必要です。 |
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チェックリスト ・噛みつこうとする対象は誰ですか? 家族全員/特定の家族/自宅に来る人/ 特定の第三者/触っている人/触ろうとした人/すれ違う人/ ・しようとすると噛みついてくることは何ですか? 移動させる/首輪や紐を付ける/食事を与える/食器を片付ける/ハウスへの出し入れ/抱っこをする おもちゃで遊ぶ/オモチャを取りあげる/ 手入れ(シャンプー・ドライヤー・櫛掛け・耳掃除・爪切り・足拭き・歯磨き) 掃除機かけ/ ・どのような状況で噛んできますか? 部屋に入る/犬に近づく/犬に触る/紐を持とうとする/ ・特定の状況はありますか 傍に特定の人がいる/特定の条件の人/食べ物絡み/オモチャ絡み/休息絡み ・時間帯による差異はありますか? ・場所による差異はありますか? 自宅/散歩時/ ハウス内/ソファーやベッドの上/玄関先/散歩時/特定の場所 ・これまでの人が噛まれた部位 手/腕/足/脇腹/顔 ・怪我の状態 内出血の有無/出血の有無/通院の有無/縫合の有無/ ・対象認知時の行動 無反応/襲い掛かってくる/吠えながら近づく/凝視する/唸り声を出す/逃げ出す ・警戒距離侵入時の行動 攻撃噛咬/威嚇噛み(警告噛み)/防御噛咬(抵抗噛み) |
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安直な解決方法 ただしこれらは問題の先送りにすぎませんが、応急措置や予防策、窮余の策としても用いる場合があります。 もちろんそれで終生まで事故を起こさずに飼い続けられる場合もあれば、 途中で飼い主がお手上げになってしまったり、 エスカレートして手に負えなくなったりすることもあります。 ●生活空間の交わりを限定する ・外飼いにする : 人間の生活空間と犬の生活空間を全く別にする ・ケージ飼いにする : 人間の生活空間と犬の生活空間の間に物理的に仕切る 動物園での猛獣の飼育を考えればお分かりのように、人間の生活空間と犬の生活空間を区分して全く別個にするのであれば、 相当の咬癖の犬であっても飼い続け、終生を全うさせてあげることができます。 すなわちは、犬の終生を檻の中で飼育するという選択肢です。 この場合にも、排泄と運動をどのようにするのかという問題と同時に、それに伴う別の問題行動が発生することもあります。 もっとも多く問題となるのは吠えの問題、さらには破壊や自傷という問題行動が発症する場合もあります。 ●犬の行動に迎合する 対立行動から攻撃行動に出る犬に対しては、対立する事態を避ければいいのです。 ●犬の嫌がることをしない 手入れなど犬の嫌がることは外注とし、トリマーさんや獣医さんにお願いしましょう。 ●犬の要求を叶える 犬の気持ちを知り、犬の望むことを与え続けてあげればそれほどの問題は起きにくくなります。 ●犬を疲れさせる たくさん運動をさせて思いっきり疲れさせるようにしましょう。 散歩に連れ出すことは、犬の扱いを習って若干の工夫と注意をすれば多くの場合は可能です。 噛みつき犬への対応 まずスタートは、「犬が噛み付いてくる状況を作らない」ことから始めます。 しかしその前に、すでに噛みつき行動は起きているのですから、犬が噛んできた時にどう対応すればいいのか、 どう対応するべきなのかについて、きちんと知っておかなければなりません。 矯正トレーニングを開始後、普段の生活の中で犬に噛まれてしまった時には、あきらめて被害を最小に留めることです。 「犬が自信を持ってさらに強くなってしまう」、あるいは「成功体験の学習をすることで繰り返すようになる」という理由を挙げて、 ひるんではいけませんとか、やりかけていたことを途中で止めてはいけませんと言う人もいるでしょう。 たしかに理論としては正論でしょうが、まさに机上論、理想論です。 おそらくは愛玩犬のおままごと程度の噛み犬しか扱ってこなかった人か、屈強あるいは鉄砲玉のような人としか思えません。 好ましいことではありませんが、どんな人でも怖さから瞬間的に身を引いてしまうことは止むを得ませんし、 怪我を少なくするためにも必要なことです。(※咬み付かれている最中に腕を引くことは咬傷部位を大きくします) 噛みつかせてしまった時点であなたの失敗なのですから、そうなってから足掻いたところで良い結果は産まれません。 とにかく素直にその場はやり過ごすことです。痛みや怪我の程度にもよりますが可能な範囲で淡々と、 何事もなかったごとくにその場を終わらせて、自身の安全を確保します。 犬の興奮を誘いますので、一切は無言で行なうほうがよいでしょう。 噛んできたことを叱った方がいいように思う人もいますが、噛んできた状況で犬を叱ることは全く無意味です。 そもそも噛み癖は、叱って直すものではありません。 私自身は、噛み付きの原因によっては矯正手段として犬と力勝負をする手法を用いることもあります。 しかしこのように犬が噛み付いてきた状況で相手を叩きのめすような真似は、決して行なってはいけません。 特に、叩く蹴るなどの打撃系(衝撃系)の罰は事態を悪化させるだけです。 恐怖心から噛んでくる臆病な犬の噛みつきに対して、反撃などしようものなら修復不能な事態になります。 噛み付いてくる状況を作らないために ☆上手な近づき方と触り方を知っておく 驚かせない、恐がらせない、怒らせない、嫌がらせない。 ☆不安を与える挙動をしない 追い詰めない、怖がらない、踏み込まない。 ☆挑発する行動をとらない 見つめない、向き合わない、逃げない。 噛みつかれないために ☆噛み付いてくる状況を把握しておく ☆噛み付いてくる前兆を知っておく 主な前兆行動 対峙する/頭を下げる/身体を硬直させる/毛を逆立てる/瞳孔が開く/ 唸り声をあげる/吠える 鼻元に皴を寄せる/ 口角を引く/歯を剥きだす/口唇を震わせる 前足をかける/立ち上がる/上半身を伏せる/半身を捻じる/後退りする ☆リードの着用 噛みつく犬に対峙する際には必ずリードを着装しておくべきです。 ところが実際にはリードやカラーを付けられない状態になっている場合も多いです。 またトレーニングに取り掛かる度にリードの装着によって犬を緊張状態にさせることは好ましくありませんので、 リード(引き綱)とカラー(首輪)は、装着したままにすることをお奨めします。 咬みつきに対応して犬を吊り挙げなければならない状況もありますので、必ず抜ける心配のないカラーを用います。 まれに噛み付く犬にハーネス(胴輪)を使用している飼い主もいますがお奨めしません。 リードは絡んでしまったり、犬が噛み切ってしまうことを防ぐためにもワイヤーリードを用いる場合も多くあります。 ☆口輪の着用 怖がりの犬が本来であればとる本能行動は、逃走です。 逃げたがっている犬に対し、飼い主がこれをリードで遮ってしまうために、 犬はしてみればしょうがなく噛み付くという行動へと推移することがままあります。 克服するまでの過程においては、不安や恐怖から暴れまわって飼い主や対象を噛んでしまうこともあります。 飼い主がそれを怖れながら行うのでは、犬にきちんとさせることができない上に不安を連鎖させてしまいます。 犬によっては、あらかじめ口輪の装着も必要でしょう。 昨今は口輪の形状もさまざまなものがありますが、どうしても呼吸による体温調整の妨げになりますので、 それに対する配慮は忘れずに行ってください。 ただし、噛み犬のご相談をなさる方のほとんどが、まず口輪を付けることからが出来ません。 もし今現在は口輪を装着できる程度の症状なのであれば、将来的にも口輪を嫌がらせないために、 今のうちに適切な使用方法の指導を受けた方がよいでしょう。 飼い主の能力向上のために ・愛犬の特性を熟知 ・行動学知識の修得 ・リード捌きの修得 ・服従訓練の実施 怪我の軽減のために 噛まれた際の怪我を最小限にする方策として犬歯の切除があります。 本気噛みの実態をあまり存じ上げない方からは非難を受けることも多いのですが、私は、まずこれをお奨めいたします。 去勢や避妊手術同様に麻酔によるリスクはありますが、現代の飼い犬は生肉を噛みちぎる機会などは有りませんので、 メリットに比較すれば犬への負担はほとんどありません。抜歯ではなく、ほかの歯と同じ高さに揃えて切ってもらいます。 獣医さんによってはなさらない人もいますが、まずはかかりつけの獣医院に相談してみてください。 怪我の防止 季節によっては無理がありますが、犬の元に行く時には、なるべく厚着をする方がよいでしょう。 症状によっては、革手袋やステンメッシュの防刃手袋、ブーツや安全靴などの防具が必要なこともあります。 間違えてはならないことは、これらの防具は怪我を防ぐためのものであって、犬に噛ませるための装備ではありません。 咬み付きの矯正として行なう受容の拡大は、咬み付き行動を起こす寸前までを繰り返すことですから、 噛ませてしまうということは失敗なのです。 用具の工夫 散歩中にも犬と一定の距離を保つことができるように野犬捕獲員が使用するような器具を用いることです。 傍の人から見れば、かなり不審な散歩風景になりますが、跳び掛かりながら噛み付いてくるタイプの場合には不可欠です。 市販されているのは見たことがありませんので、私はいつもその犬に合わせて自作しています。 簡単には、リードの首輪と握り手との間に1m程度の長さのポリパイプを通して使用します。 なお首輪は、犬が後ずさりをした際に抜けることが無いようにハーフチョークタイプのものを使用することをお奨めします。 首輪を付けることができない犬の場合には、刺又やエリザベスカラーなどを用いて最初の装着をする場合もあります。 |
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参照 訓育編=噛みついてくる 問題行動 矯正訓練 問題行動=甘噛み 問題行動=本気咬み 相談編=飼い主に唸る犬 相談編=噛みついて困る犬 |
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